第5 その他の留意点
1 事実認定起案のための要素
民裁事実認定起案では,記録を読んで事実認定の実質的な思考をした上で,その思考過程・結果を,起案用紙に文章で表現することになる。 そこで,要素としては,次の二つ。
code:要素
ⅰ 事実認定の実質的な思考
ⅱ 実質的な思考を文章化する作業
そして,事実認定起案の特徴としては,ⅱの文章化作業によって差がつきやすい点が挙げられる。そこで,これまでは,ⅱの文章化作業の留意点を述べてきた。
とはいえ,ⅰ事実認定の実質的な思考も,多少は必要と思われるし,実務についてから役に立つのはまさにこちらなので,そっちも多少触れておきます。
2 実質的な思考の側面に関する若干の考察
(1)参考文献
(2)一種の法定心証主義
大阪地裁倒産部の某部長によれば,民裁の事実認定は,一種の法定心証主義であるらしい。
すなわち,どんな書証があるか,どんな事実が動かしがたい事実として存在するか,によって,事実認定の結論が決まっているということ。
事実認定を考える際には,自分の思考をその法定心証の取り方に近づけるように心がける。
(3)念頭に置いておくとよい視点
ア 証拠判断
(ア)書証が重要。
(イ)供述は,あんまり重視しない。
イ 判断の構造
(ア)まず,動かしがたい事実を置く。
(イ)その動かしがたい事実を合理的に説明できているほうが勝ち。
ウ 合理的な説明かどうかの分析例
(ア)お金が出てきたら,その流れ
(イ)契約なら,相手方当事者
(ウ)要するに,常識
(エ)その人の気持ちを考える,はちょっとリスキー
(4)起案によく出る類型
起案でよく出るのは,保証契約の成立と,売買契約の成立。
ア 保証契約
二段の推定パターンでの出題がメイン。
イ 売買契約
処分証書に争いがない場合の特段の事情判断パターンがメイン。
領収証がある,契約書が二通ある,契約書の当事者はAになっているが,被告はYが当事者であると主張している,など。